遺産分割を放置していませんか?
ご家族やご親族が亡くなり、相続を進める中で、「遺産分割が進まない。」、「相続が発生したけど遺産については何もしていない。」という声を多くお伺いします。例えば、下記のような理由で遺産分割が進まない、ということはありませんか?
- 疎遠な相続人がいて話し合いが進まない
- 被相続人の遺産として1億円を超える預貯金だけがあるが、相続人が数名いて、かつ鹿児島県内と全国に散在しているので、話し合いが進まない
- 行方不明、所在不明の相続人がいて話し合いが進まない
- 不動産の登記名義が以前の相続の際に変更されておらず、相続関係が複雑になっている
- 相続する不動産が共有である
上記のような理由で、相続の手続や遺産分割が止まってしまっているということあるかと思います。
「遺産分割」が終わっていないと、相続手続を終わらせられないことによって不利益を被る可能性があります。また、その時の遺産分割をまとめず、相続手続をしなかったことで、次の相続が発生(つまり遺産分割を放置しているあなたが亡くなったあと)したときに、相続トラブルの原因のひとつとなり、家族のご縁が切れてしまうような大変な相続争いに発展してしまう可能性もあります。
では、具体的にどのような不利益が発生しうるのでしょうか。
遺産分割を放置していた場合に起こりうる不利益やトラブルについて
1、銀行から預貯金の払い戻しを受けることができなくなる可能性がある
故人が亡くなると、銀行などの金融機関の預貯金口座は引き出しができなくなります。これを預貯金口座の凍結といいます。故人が遺言書を遺していない場合、預貯金口座の凍結を解除し、預貯金を全額払い戻すためには、相続人間で遺産分割の協議を行い、預貯金をどのように取得するか、相続人全員で合意する必要があります。逆に言えば、遺産分割が終わらないと、故人が持っていた銀行をはじめとする金融機関にある預貯金を全額払い戻すことができません。
※令和元年7月1日より、民法改正によって、遺産分割前の預貯金の一部引き出しが認められることになりました。詳細は弁護士にご相談ください。
遺産分割の協議が完了し、相続人間で合意した事項をまとめ、相続人全員の実印が押印された「遺産分割協議書」を含めた各書類がそろっていないと、預貯金を全額引き出すことができず、相続手続が滞ってしまいます。そのため、葬祭費用の精算や相続後の財産の処分、遺産にある不動産の柔軟な分割取得ができにくくなり、結果的に相続人全員が損を被ることになります。
2、相続税申告時に、配偶者控除などの税控除特例が使えなくなってしまう
相続税申告の際に、例えば「配偶者控除」、「小規模宅地の特例」のような、一定の特例を用いて相続税額を低く抑えることが可能とされていますが、この特例は対象の財産を誰に相続するのか、どのように分けるかが決まっていないと適用できません。
遺産分割協議が整っていない段階では、「とりあえず法定相続分で相続したもの」と仮定して計算した額で相続税を申告し、金銭による相続税の一括納付を行わなければなりません。
この申告の際に「遺産分割協議を3年以内に終わらせる」旨を届け出ることで、遺産分割協議を行った後に、特例等を適用した正式な額を計算しなおして多く収めた分は還付してもらうことができるのですが、一時的に相続税額や相続税の申告業務を税理士に委託するための税理士費用を負担する相続人がでてきてしまいます。この負担をする人や負担後の相続税の負担割合を相続人間で調整しようとするとこれまた手間になるでしょう。
ですので、相続税申告の期限である相続発生後10か月後までには、弁護士に相談し、遺産分割協議を完了しておいたほうがトラブルになるリスクを減らすことができまし、相続税申告自体もスムーズに進められます。
3、不動産が相続人間の共有名義になるため、売却や賃貸などが困難になってしまう
故人の名義の不動産は、死後に相続人全員の「共有名義」になります。遺産分割をせず、また不動産の名義変更(相続登記)も実施せず、「共有名義」のままにしておくと、不動産全体の売却や賃貸借をするにも、共有名義となる相続人全員から合意を得てからでないと実施できないことになります。
さらに、長く放置しておくと、「数次相続」が発生し、さらに複雑な状態になってしまいます。
「数次相続」とは、最初に亡くなった人の財産が適切に遺産分割を経て相続されないまま、相続人が亡くなり、最初に亡くなった人の財産を次に亡くなった相続人の相続人に、さらに相続させなければならない状態のことを指します。
このような数次相続が起きるたびに、遺産分割の当事者は増えていく可能性があります。実家の売却を考えたとき、共有状態では全員の同意を必要としますから、相続人同士で面識がない・連絡が取れないなど、スムーズに進まないことは容易に予測できるでしょう。そのため、遺産は放置せずに、相続が発生したらすぐに遺産分割協議をすると良いですし、自分達だけで遺産分割協議ができないのであれば、弁護士に相談し、家庭裁判所における調停や審判を利用して、遺産分割を実現すると良いでしょう。
4、相続した不動産の登記が義務化されます
所有者不明土地の問題を解消するため、2024年4月1日から「相続の開始および所有権を取得したと知った日から3年以内」に相続した不動産の名義変更をしなければなりません。遺産分割によって不動産の所有権を取得する場合には、「遺産分割された日から3年以内」に相続登記を済ませなければならないということです。
今まで相続登記を放置した理由は、
不動産の価値が低い
相続人間で話し合いがまとまらない
相続人に行方不明(音信不通)、所在不明の人がいる
など様々な理由で相続登記を放置していた人も多いかもしれません。
しかし、今後は正当な理由が存在しなければ、相続により取得した不動産を3年以内に登記しなかった場合、10万円以下の過料を求められる可能性があります。
正当な理由は、下記のケースのみに認められています。
①数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース
②遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース
③申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース
④登記簿は存在しているものの、公図が現況と異なるため現地をおよそ確認することができないケース
法務省|法制審議会-民法・不動産登記法部会|資料19”不動産の遺産分割協議は、解決する必要のある課題が多く見られるケースも少なくないので、ご自分だけで遺産分割協議を解決しようとする場合、定められた期間内に登記できない可能性が高くなることも考えられます。もし現在、亡くなられた被相続人の名義のままで、名義変更を行っていない土地をお持ちの方がおられたら、お早目に弁護士にご相談ください。
遺産分割協議の段階で早期に弁護士に相談し、遺産分割交渉を委任することで、例えば他の相続人にも代理人弁護士が選任されて遺産分割交渉が加速化し、比較的短期間で解決できる可能性が高まり、スムーズに話がまとまることも可能になります。あなたの貴重な時間をご自分がしたいことに充てることが可能になり、またご家族・ご親族間の関係性も円満な状態を維持することができます。
5、遺産分割協議が長引き相続税申告が間に合わない
相続税の申告期限は、被相続人が死亡した事実を知った日の翌日から10か月以内となっています。しかし遺産分割協議で揉めることは多く、思い通りに全て分割協議が前に進むとは限りません。
また、相続税の申告のためには相続人の調査や相続財産の調査が不可欠です。その際は、戸籍謄本を収集して調査をすることに加えて、不動産や預貯金、株式や生命保険等の調査をしなければなりません。相続税の申告期間というタイムリミットがある中でこれらの作業をご自身だけで行うことは、心理的にも時間的にもご負担になるかと思われます。
そこで遺産分割を適切かつ迅速に行うことが、法務面においても税務面においても、相続の手続を円滑に進める第一歩であり、そのためにも早期に、遺産分割に精通した弁護士に相談をすることが重要です。
遺産分割は早めに弁護士にご相談を
- 疎遠な相続人がいて話し合いが進まない
- 被相続人の遺産として1億円を超える預貯金だけがあるが、相続人が数名いて、かつ鹿児島県内と全国に散在しているので、話し合いが進まない
- 行方不明、所在不明の相続人がいて話し合いが進まない
- 不動産の登記名義が以前の相続の際に変更されておらず、相続関係が複雑になっている
- 相続する不動産が共有である
こういったことでお悩みの方は、まずは弁護士に相続の相談をすることをおすすめいたします。
相続問題の解決実績が豊富な弁護士が、長い間解決できないでいた相続の問題を解決に導くサポートを行います。
当事務所では相続に関する初回相談は60分まで無料ですので、お気軽にご相談ください。