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遺言の内容と異なる遺産分割はできますか?

2023.07.18

A.遺言書が作成されている場合、遺言者の意思を最大限尊重するためには、遺言書どおりの相続を行うことが望ましいといえます。

したがって、遺言の内容と異なる遺産分割は、これが認められる十分な理由がある場合にすることができると考えられます。

例えば、「遺言書」といっても様々な遺言書があり、遺言者・被相続人が生前、相続人となる皆様宛てに相続が発生した場合についてみんなで仲良く暮らしてほしいことを願うことを書いた手紙がある場合、この手紙をもって「遺言書」と受け止める方は現実にはいらっしゃると思います。このような手紙には自筆証書遺言として相続を実現する具体的な効力はないと考えられますので、相続人の皆様が当該「遺言書」の趣旨を尊重しつつ、遺産分割協議を行って、遺言とは異なる遺産分割を行うことはできると考えられます。

また、遺言者が重い認知症である状態で遺言書を作成した場合、遺言者が遺言書の内容を理解しておらず、遺言書は無効となる場合があります。このような場合には、相続人間で遺言書が無効であることを確認、合意したうえで、遺産分割協議を行って、遺言と異なる内容の遺産分割を行うことができます。

次に、有効な遺言書が作成されており、遺言執行者が遺言書で指定されておらず、いない場合には、相続人全員が合意しており、受遺者がいる場合には受遺者が遺贈の権利を放棄する意思表示を示している場合には、遺言書とは異なる内容の遺産分割協議をすることができると考えられます。これは、遺産分割においては、相続財産を受け継ぐ相続人の自由な意思を尊重することも求められること、受遺者は遺贈の権利を放棄することができ(民法第986条)、遺贈の権利が放棄されれば、相続人は遺贈の対象となっていた財産を含めて、遺産分割協議をすることができるからです。

さらに、有効な遺言書が作成されており、遺言執行者が遺言書で指定されている場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない(民法第1013条第1項)とされていることから、遺言の内容と異なる遺産分割は原則としてできないと考えられます。

もっとも、遺言の内容や遺言の目的、遺言者の意思をふまえつつ、相続人全員の合意と遺言執行者の同意がある場合には、遺言の内容と異なる遺産分割を行う余地がないではないと解されます。どのような場合に遺言書と異なる遺産分割を行うことができるかは、弁護士に相談し、遺言執行者ともよく協議したうえで判断するとよいでしょう。

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